薄暗さの中にこそ宿る美
「陰翳礼讃(いんえいらいさん)」という言葉をご存知でしょうか。
小説家・谷崎潤一郎が昭和初期に発表した随筆のタイトルで、そこには、いにしえの日本、まだ住宅に電灯が無かった時代に、日本人が薄暗さの中に美を求めることで暮らしを豊かにしてきたことが記されています。
このお部屋に出会って、「照らしすぎないこと」の豊かさを改めて実感することとなりました。
都心ど真ん中、港区赤坂。最寄りの乃木坂駅だけでなく、複数路線が乗り入れる六本木、青山一丁目も徒歩圏内。通勤に時間を割きたくない、いつでもフットワーク軽く動きたい職住近接派のビジネスパーソンにぴったりの立地です。
お部屋があるのは、レンガ色タイルが目を引くレトロな佇まいのマンションの一室。こちらのマンションの西側は雁行型(がんこうがた)といって、居室が斜めにずらして配置されている設計。ご紹介のお部屋も、この西側に位置しています。
室内は、元々1LDKだった間取りを現在のオーナー様が2017年にリノベーションされ、仕切りのない回遊できるワンルームに。床に段差を設け、床材もフローリング、モルタルと使い分けることで空間をゾーニングしています。
何より特徴的なのが、ほぼ躯体剥き出しの天井と壁。仕事柄、スケルトン(内装・設備を全て解体した、躯体だけの状態)住戸を見る機会もちょくちょくあるのですが、こちらのお部屋の躯体、非常にキレイ。思わず見せたくなってしまうのも頷けます。色ムラや凸凹をあえてそのまま活かしたことで、季節ごと、時間ごとの光の入り方による表情の変化が生まれました。
現在(2019年冬)は一段下がったモルタル床のスペース(間取図「リビングダイニング」部分)にベッドを置いていますが、夏はフローリングのスペース(間取図「ベッドルーム」部分)にベッドを移動して、バルコニー側から入る風の涼しさを味わっているのだとか。
バルコニーに敷かれたウッドデッキは、このフローリングスペースとフラットに繋がるので、暖かくなったらこの場所をセカンドリビングのようにして休日を楽しみたい。
一見すると現代的なデザインでありながら、その住まい方には、薄暗さに美を見出し、春夏秋冬の変化に合わせて生活を楽しむ、陰翳礼讃的日本らしさがありました。
内見のご予約、心よりお待ちしています。